矢場やば)” の例文
それは近ごろ矢場やばというものがすっかり廃れて、それが銘酒屋や新聞縦覧所に変ってしまったという噂が出たときのことである。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
浅草あさくさ公園の矢場やば銘酒屋めいしゅやのたぐひ近頃に至りて大方取払はれしよし聞きつたへてたれなりしか好事こうずの人の仔細らしく言ひけるは
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ひるからは各種の露店が出る、銀流ぎんながし、矢場やば賭博とばくがある、大道講釈やまめ蔵が出る——という有様で、その上狭い処にあふれかかった小便桶が並んであるなど、乱暴なものだ。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
五人徒歩して浅草公園を一巡し千束町せんぞくまち一丁目松葉屋といふ諸国商人宿あきんどやどに入りて夕飯を食し、さておもひおもひに公園の矢場やば銘酒屋をひやかすあり
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
目と鼻のあいだには神明しんめい矢場やばがある。権七はそこの若い矢取り女になじみが出来て、毎晩そこへ入りびたっているので、おいねの方でも嫉妬に堪えかねて、夫婦喧嘩の絶え間はなかった。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)