真実まつたく)” の例文
旧字:眞實
「スムウトさん、一寸伺ひますが、お国には一人の殿方で奥さんをたんとお持ちの方が随分ゐらつしやるさうですが真実まつたくなんですか。」
「人の子枕す時もなし、ああみ怒り……審判さばきの日……。」「人の子枕す……」然うだ、実際だ。人の子は枕する時もない。人の子は枕する時もない。世界十幾億の人間、男も、女も、真実まつたくだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると、大麓氏は、「へえ、中沢君が油絵をく。」と言つて、不思議さうに卓子テーブル向側むかうがはにゐた中沢博士の顔を見た。「それは初耳だ、真実まつたくですか。」
「先生、その日になると、人間残らずが神様の前へ引張り出されるとお言ひになりましたが、真実まつたくなんですか。」
真実まつたくでございますよ、お坊さんの癖に、こんな物までつくなんて、お上人様方のお若い時分には、ほんとに不味まづい物ばかし召食めしあがつてたぢやありませんか。」
「先生、ちよいとお伺ひ致しますが——」娘はあまえたやうな身振をした。「天国には結婚が無いやうに福音書に書いてありますが、あれは真実まつたくなんでございませうか。」
だが真実まつたくのところ、嘘一つけないやうなろくでなしでは、とても正直者にはなりかねる。
嘘のやうだが、これは近刊の英字雑誌に載つてゐる真実まつたくの事実談である。
仏蘭西人はよくこんな事をいふが、真実まつたくだなと思つた。