直筆じきひつ)” の例文
「よしや、直筆じきひつなるにもせよ、一老中のご意見で、法をうごかすなどという例はない。もってのほかな僭上せんじょうというものであろう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀頼をよろしく頼むとさる人に宛てて細々こまごまと書いた自筆の消息状、並びに、豊臣秀頼八歳の時の直筆じきひつがお有りだそうだ、後学のために、ぜひ、それらは拝見いたしておきたいと
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは確かにお通の直筆じきひつで、目見得が済んで住みつく事になったから安心してくれ。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし、グルストン街の壁の文字だけは、最初のそして最後の、純正な犯人の直筆じきひつである。この唯一の貴重な証拠が、心ない一巡査の手によって無に帰したのは、かえすがえすも遺憾のきわみであった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
おそれ多くも、君祖家康公よりお直筆じきひつ墨付きを頂戴しておるお目見得格めみえかく、松井一族を、どう御処分あるや、拝見な仕りたい。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が直筆じきひつの手本というものは今も村に残っている。磯部に於ける彼は決して不人望ふじんぼうではなかった。弟子たちにも親切に教えた、色々の慈善をも施した。碓氷川の堤防も自費で修理した。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは大納言様の直筆じきひつで候の、このほうは大御所様で候の、これはまた少し御安値おやすねではございますが、当時大阪第一の学者——といったように、広告、ひろめ、つまり宣伝てやつでおどかして
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まぎれもない、直筆じきひつ前黄門さきのこうもんの品位のたかい書風であり、それに、有名な能筆なのですぐに分る。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が直筆じきひつの手本というものが今も村に残っている。磯部に於ける彼は決して不人望ではなかった。弟子たちにも親切に教えた、いろいろの慈善をも施した、碓氷川の堤防も自費で修理した。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一 明朝、寝込みに、或いは都合によって夕刻、すべての証拠がため整い次第に、東儀与力自身、奉行直筆じきひつ差紙さしがみをふところにして、富武五百之進いおのしんの屋敷に赴き、塙郁次郎を御用拉致らちすること
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)