目附めつけ)” の例文
さすがのお奉行樣も吟味の仕樣がないので、先づおかまひないと云ふことで勘太郎めを一旦下げて置いて、實はちやんと隱し目附めつけをつけてあつたのだ。ねえ、彦三郎さん。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
二人以外の船の目附めつけとしては、その老巧から言っても当然その人ですから、ほとんど隔晩には船へ泊りに来て、船は、今やこの三人だけの世界のようになっているのです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
奉行、目附めつけなどの警戒も元よりであろうが、秀忠将軍は若くて闊達かったつだ。よく侍側を従えて普請場ふしんばへも現れるという。そんな折、飛び道具なら瞬間で目的を果すことができよう。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目附めつけその他役附老中の出馬、諸大名の固め、町火消、諸家おかかえ火消と繰出して、持場持場についたものだが、当今、城は宮城であり、何しろ議事堂の失火だからと、父ははなしてくれた。
「むむ、まったく困りものだ、甲府勝手へ廻されたのを自暴やけで、ああしておいでなさるんだから、何をするか知れたものじゃねえ。金公、お前ぬからず目附めつけをしていてくれねえと困る」
『とうとう来たっ。お目附めつけ、荒木十左衛門殿、お使番つかいばん久永内記、御両所の検死。ほかお徒士かち目附七人、お小人こびと目附六人を従えて、たった今、未上刻ひつじのじょうこく(午後二時)御来邸、役者の間へ通った!』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
表面の辞令をいただかないお目附めつけだ、悪く言えば間諜かんちょう、ペロで言えばスパイというやつかも知れないが、決して下等な仕事じゃない、柳生但馬もやれば、石川丈山もやった仕事なんだ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、許して、ひそかに、光秀の背後には、目附めつけの士をつけておいた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨日出張の目附めつけは、さだめて早馬を飛ばせて江戸へ注進に及んでいる最中でしょう。館山、北条あたりの海上からも、幾多の早舟が飛び出すところを見れば、船手からの注進をも急ぐものと見える。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)