白蔵主はくぞうす)” の例文
老人、あの当時、……されば後月あとつき、九月の上旬。上野辺のある舞台において、初番に間狂言あいきょうげん那須なすかたり。本役には釣狐つりぎつねのシテ、白蔵主はくぞうすを致しまするはず
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
素裸で、お蕎麦一杯を恭しく捧げて、まじめくさって突立った形は絵になるじゃないか、白蔵主はくぞうすのお使といったような形だね。そんな人を食ったところもあったそうだ。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はて、彼処あすこをさように魔所あつかい、おばけあつかいにされましてはじゃ、この似非えせ坊主、白蔵主はくぞうすではなけれども、尻尾が出そうで、くすぐっとうてならんですわ。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれよあれよ、古狐が、坊主に化けた白蔵主はくぞうす。したり、あのすごさ。さびしさ。我は化けんと思えども、人はいかに見るやらん。尻尾を案じた後姿、振返り、見返る処の、こなしおもむき
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)