白楊樹はくようじゅ)” の例文
だがの棗屋なつめやさんよ。おまえにだけはそっと耳打ちしてあげる。——なんでもいいから、道の曲がり角へ来たら白楊樹はくようじゅ(ポプラ)を目あてにお曲がり。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏の午後、畑の中で、天鵞絨ビロードのごとき牧場の上で、長い白楊樹はくようじゅのさらさらと鳴る下で、うっとりとふける夢想……。
アメリカの曠野に立つかしフランスの街道に並ぶ白楊樹はくようじゅ地中海の岸辺に見られる橄欖かんらんの樹が、それぞれの姿によってそれぞれの国土に特種の風景美を与えているように
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は恐縮してびた。そして牧場の白楊樹はくようじゅの影に寝そべろうと言いだした。シュルツはもとより承知した。それが自分の気管支炎にさわるかどうかも考えなかった。
「ただやみくもに歩いても、迷うばかりでむらの外へは抜け出られませんぞ。白楊樹はくようじゅが正しい道の目じるしです。曲がり角へ出たら、なんでも白楊の立木を目あてに折れ進んで行ってください」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、今執拗しつようにその思い出が浮かんでくるのはなぜだかを怪しんだ。澄み切った運河に沿って白楊樹はくようじゅの並木道をたどりながら、その思い出がしきりに浮かんできた。
柔らかな風になでられて起伏する、花時の小麦のそよぎが聞こえていた。白楊樹はくようじゅが揺いでいた。
風が煙筒の中でうなっていた。階下したとびらが一つばたばた動いていた。一本の白楊樹はくようじゅあらしに打たれて、窓の前でみりみり音していた。クリストフは眼を閉じることができなかった。