癆症ろうしょう)” の例文
「三河町の半分は持っているだろうという大地主ですよ。その吉田屋の総領の彦次郎という好い息子が癆症ろうしょうで死んだのは去年の暮だ——もう半歳になりますね」
「いいパオだ。全くいいパオだ。ああいう熱い奴を食べれば、ああいう血饅頭はどんな癆症ろうしょうにもきく」
(新字新仮名) / 魯迅(著)
……今で言えば肺病でござりますが、其の頃は癆症ろうしょうと申しました、寝衣姿ねまきすがたで、扱帯しごきを乳のあたりまで固く締めて、縁先まで立出たちいでました途端、プーッと吹込む一陣の風に誘われて
昨年の春から母親が癆症ろうしょうで、腰が抜けたので、とうとうこの川上の部落に落ちつく事になったが、丁度その時が適齢だったので、呼び出されて検査を受けると、美事に甲種で合格した。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わけを知らない人は癆症ろうしょうであろうなどともうわさしていた。そのあいだに夏も過ぎ、秋が来て、旧暦では秋の終りという九月になった。行者に教えられた百日目は九月十二日に相当するのであった。
影を踏まれた女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
去年も城内で犯人が殺されると、癆症ろうしょう病みの人が彼の血を饅頭にひたして食った。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
伊勢屋の息子は五年がかりの癆症ろうしょうがケロリと治って嫁を貰い、旗本三右衛門の奥方は、江戸中の医者に見放された眼病が平癒し、小梅の豪農小兵衛は、気が触れてあらぬ事を口走ったのが
癆症ろうしょうだか恋患いだか知らないが、青くてヒョロ/\して居るくせに、どう渡りをつけたか、江島屋の下女のお六を手に入れ、毎日一本ずつ、一年も続けて恋文を取次がせるんだそうですよ
事情が事情だったので自殺だという噂も立ちましたが、事実はひどい懊悩おうのうと貧苦のために、癆症ろうしょうが重くなり“帰った夫”を迎えて、もう一度以前の平和な生活を楽しむことも出来なかったのです。
可哀想に、あんなに綺麗で優しかった、お浜が——医者は癆症ろうしょうだと申しますが、せき一つしない癆症というものがあるでしょうか、癆症は癆咳ろうがいと申しまして、咳のひどい病気だと聴いておりますのに。