男性をとこ)” の例文
実に是邂逅めぐりあひの唐突で、意外で、しかも偽りも飾りも無い心の底の外面そと流露あらはれた光景ありさまは、男性をとこと男性との間にたまに見られる美しさであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼女等は口々に赤ん坊(全く、色が白く、可愛くふとつてゐた)の可愛らしさを讚めながら、男性をとこには想像も出來ない貪婪な眼付を以て、幸福さうな若い母を
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
朝空を望むやうな新しい生涯に入る迄——熱心な男性をとこ嗚咽すゝりなきが声を聞くやうに書きあらはしてあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
欝勃うつぼつとした精神は体躯からだ外部そとへ満ちあふれて、額は光り、頬の肉も震へ、憤怒と苦痛とで紅く成つた時は、其の粗野な沈欝な容貌が平素いつもよりも一層もつと男性をとこらしく見える。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)