生顔いきがお)” の例文
昔し死んだ赤ん坊については、なおの事同情が起らなかった。彼はその生顔いきがおを見た事がなかった。その死顔しにがおも知らなかった。名前さえ忘れてしまった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「妙子さんではないかというのだろう。僕もそれに注意しているんだが、少しも似ていないよ。生顔いきがお死顔しにがおとは相好そうごうが変るものだと云っても、こんなに違う筈はないよ」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いえ。ここのおやかた様のおん生顔いきがおを、ぜひ一つ写してみたい料簡りょうけんでございまする」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)