生一本きいつぽん)” の例文
まことに正味の茶には相違ないが、いかに言つても生一本きいつぽんで、灰汁あくが強い。それに思つたほどの味が出ない。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
不確な自分勝手の速断の為めに二人の友情をまで汚すのは彼には忍びがたいことだつた。此の生一本きいつぽんの男は何処までも真清無垢しんせいむくとして置かずにはすまなかつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
生一本きいつぽんな加野を、狂人のやうにしてしまつてまで、あの時は、富岡はゆき子を得た。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)