瑕疵かし)” の例文
抽斎は人の寸長すんちょうをも見逭みのがさずに、これに保護ほうごを加えて、ほとんどその瑕疵かしを忘れたるが如くであった。年来森枳園きえん扶掖ふえきしているのもこれがためである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
モリエルが無智の老嫗らううに自作の台本を読み聞かせたと云ふは、何も老嫗らううの批評を正しとしたのではない。唯自ら朗読するあひだに、自ら台本の瑕疵かしを見出すが為である。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
故人伊庭孝いばたかし氏は「レコードはかなわないよ、ちょっと音がずれても、そいつを執念深くくり返されるからね」と言っていた。全くレコードされた演奏は、一小瑕疵かしといえども許されない。