理髪床かみゆひどこ)” の例文
人間は理髪床かみゆひどこへ出掛けるやうに、一度は墓場へもかなければならないが、榎本氏はそんな時にでも、あの鞄だけは屹度手放すまい。
氏はよく理髪床かみゆひどこへ出掛けるが(成金にしても、人並みに頭は一つづつ持つてゐる)、そんな折にも鞄だけは店に持込んで、じつと跨倉またぐらはさんでゐる。
「いつそ揉上もみあげを短くして、ハイカラに分けてやらうか知ら。」と楯彦氏は理髪床かみゆひどこく途中、懐手ふところでのまゝで考へた。
「散髪なんか一々理髪床かみゆひどこでするには及ばない。めいめい剪刀はさみみ切る事にしたら、散髪代だけ儲かる。」
その瞬間教授の頭にきのこのやうにむくりと持上つたものがある。理髪床かみゆひどこ親仁おやぢが好く地口ぢくちといふものだ。