猥歌わいか)” の例文
つづみを打つ、はちをたたく、猥歌わいかをうたう。あげくに今、しりもちでもついたような、家鳴やなりと、男女の笑い声が、一しょに沸いた。
その素朴な猥歌わいかに茂緒はびっくりしてしまった。扶佐子は上機嫌で帰っていった。茂緒は、しらずしらず扶佐子に重荷を感じていたことに気づき、薄情なのだろうかと自分を顧みたりした。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
ゆうべ夜半よなか過ぎ迄、そこでは猥歌わいかの手拍子や音曲が聞え、こういう武家の住宅地にはあるまじき湯女ゆなの姿が出入りしていたという事である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、武蔵は、扇屋の庭にたたずみながら、彼方あなたの花やかな灯影ほかげを見ていた。けれど奥深い座敷の方には変らない「買手かいてども」の猥歌わいかや三絃が満ちていて、吉野にこっそり会って行くすべもない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)