物日ものび)” の例文
花火はなくともきょうは川開きという書入れの物日ものびに、彼女はふだん着の浴衣のままで家を飛び出して来たらしかった。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それらの品もみな幾たびか洗濯をし、破れたところには継ぎをし縫いかがって着せる。食事は一菜か一汁にかぎり、物日ものびに干魚を焼くのが精ぜいだった。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
化物屋敷は、そのあくる日も、事もなげに木戸を開けました。幸か不幸かその日は物日ものび、客は朝から突っかけて、狭い化物小路は身動きもならぬ有様です。
これをもって毎歳必ず五十日あり。この日や、縉紳しんしん先生より開化処士、青年書生に至るまで、柳をとぶらい、花をたずぬるの期となせり。ゆえに妓楼ぎろう酒店しゅてんにありては、いにしえのいわゆる門日もんび物日ものびに比す。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
物日ものびの休みにも、日曜日にも、たいてい宿直室でくらした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「八橋に土産もやらなければならない。二階じゅうの者にも相当のことをしてやりたい。まして歳の暮れの物日ものび前だ。それ相当の用意がなくって廓へ足踏みができると思うか」
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)