物々ものもの)” の例文
ドアの隙間から、だだっぴろい、ガランとした玄関のと、彫刻ほりのある物々ものものしい親柱おやばしらがついた大きな階段が見えます。
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
約束の午後六時、物々ものものしい二台の自動車が、小石川の淋しい屋敷町にある、牛原氏邸の玄関に横づけになった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしてそんな物々ものものしい駄目だめをおしながらその女の話した薬というのは、素焼すやき土瓶どびんへ鼠の仔を捕って来て入れてそれを黒焼きにしたもので、それをいくらかずつかごく少ない分量を飲んでいると
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
小笠原の物々ものものしい深刻面の真正面からぶつかっていって、ほかに格好がつかないので是も苛々いらいらしながら同じような物々しい顔を向け合せているに相違ない孤踏夫人の様子は見ものだろうと思った。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一切いっさいの準備の終った時、役人の一人は物々ものものしげに、三人の前へ進みよると、天主のおん教を捨てるか捨てぬか、しばらく猶予ゆうよを与えるから、もう一度よく考えて見ろ、もしおん教を捨てると云えば
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少年は、うれしそうにコックリすると、急に、物々ものものしいほどの真面目な顔つきになって
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)