片頬かたほほ)” の例文
誰もが感ずるであろうような、皮肉じみた笑いが片頬かたほほふるえたが——、鷺太郎は、何とはなく、不安に似た苛立いらだたしさを覚えたのだ。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
彼の片頬かたほほには見るも恐ろしいかにのような形をした黒痣くろあざがアリアリと浮きでていた。これこそうわさに名の高い兇賊きょうぞく痣蟹仙斎あざがにせんさいであると知られた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時旗太郎が、妙に老成したような態度で、冷たい作り笑いを片頬かたほほうかべた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
思わず饒舌じょうぜつに、さも悟ったかのように、そういった私は、ここで笑って見せねばならぬ、と知ったが、わずかに片頬かたほほ痙攣けいれんしたようにゆがんだきりであった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)