煖炉棚マントルピース)” の例文
旧字:煖爐棚
其の時不意に煖炉棚マントルピースの上の置時計がジーと蝉のように呟いたかと思うと、忽ち鏗然こうぜんと鳴ってキンコンケンと奇妙な音楽を奏で始めた。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
法水は疲れたような眼をして、しばらく考えていたが、ふと何と思ったか、広間サロン煖炉棚マントルピースに並んでいる、忘れな壺ポッツ・オブ・メモリーを持参するように命じた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
亡霊の消えたのは其処そこである、——博士はしゃがみこんで、根気よく二十分あまりも煖炉の周囲を撫廻なでまわしていたが、やがて指先が、煖炉棚マントルピースの一角に触ったと思うと、火床が音もなく滑って
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ああ、たしか広間サロン煖炉棚マントルピースの上に、ロダンの『接吻キッス』の模像が置いてあったじゃないか。サア、これから黒死館に行こう。僕は自分の手で、最後の幕の緞帳どんちょうを下すんだ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
煖炉棚マントルピースの上には埃が五ほども積っていて、帷幕に触れると、むせっぽい微粉が天鵞絨の織目から飛び出してきて、それが銀色に輝き、飛沫しぶきのように降り下ってくるのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)