無頼漢ごろつき)” の例文
こいつは誠に手のつけられない奴で、酒から身を持ち崩して今は無頼漢ごろつき同様になって居ります。誠に重々恥しい事ばかりです。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
彼女たちは無頼漢ごろつきどものじろりと見る眼に憤って見返すよりも涙ぐんで身を縮め、そいつらにじかに触れられてさえ避けることができないのだ。
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
そのために僕はますます無頼漢ごろつき扱いにされなくてはすまなくなる。僕は自分の人格の堕落を証明するために、いかりを小羊の上にらすと同じ事だ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無頼漢ごろつきの左の手は、袖の下からスッと動いて、鳴海司郎の右手に持った百円紙幣をさらったと思うと、物をも言わずに足を返して、蔵前の方へサッと。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
この一画は貧民窟ではあったが、また罪悪の巣でもあり、悪漢わる無頼漢ごろつきの根城なのでもあった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……僕等は又僕等で、あの曲馬団で無頼漢ごろつきどもが、日本の警察を紐育ニューヨーク市俄古シカゴあたりの腰抜け警察と間違えるような低級な連中ばかりだろうとは夢にも思いませんでしたからね。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さういつたやうな稼ぎ人や無頼漢ごろつきどもが、道の出合ひがしらにこの頭でつかちを見て、小生意気にもいきなり飛びついてみたり、また細つこい毛臑けずねでもつて力一杯蹴飛ばしてみたりするが
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「何でも無頼漢ごろつきの叔父かなんかゞいたようですが、そんな奴が訴えでもしたのではありませんか」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
事によると前科者かも知れない……という理窟から遠い親戚や無尽講の関係者、又は九段下界隈の前科者や無頼漢ごろつきなぞを出来るだけ念入りに洗ってみたが、これとても疑わしい奴は一人も居ない。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)