無宙むちゅう)” の例文
あれほど沢山おいでなされた、騎士、音楽家の方々が、一人残らず片膝をついてお眠り遊ばし、無宙むちゅうで楽器をお弾きなされたと申すのは……。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なるほど、この女、無宙むちゅうになっていやあがる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「畜生! 畜生! こん畜生!」と、無宙むちゅうで彼は抑え付けた。間も無くはげしい衝動は止んで、かすかに幽に痙攣するのが、抑えている手に感じられて来た。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
浪路は、無宙むちゅうに、身をもがいた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一千に近い大衆が狭い町筋に楕円を描いて夜の七八時から翌朝まで文字通り無宙むちゅうに踊り抜くのである。真率しんそつな文句、単調な身振り、節は誰も知っている「ナカノリさん」である。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼はにわかに胸苦しくなり、無宙むちゅうで飛び起きて駈け廻った。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)