灸点きゅうてん)” の例文
旧字:灸點
新吉は、晩に寝るとき、滋養に濃い酒を猪口ちょくに一杯ずつ飲ませなどした。伝通院前に、灸点きゅうてんの上手があると聞いたので、それをも試みさした。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かねて信心渇仰の大、大師、弘法様が幻に影向ようごうあった。灸点きゅうてんの法を、その以心伝教で会得した。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病人に灸点きゅうてんをして困らぬながら糊口くちすぎ生業なりわいもし、夜は静かに写経などして、ひとり暮しの気易さに馴れてからは、持病も久しく起らないし、この秋は、体もめっきり若返ったふうである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに伊勢の山田の灸点きゅうてんの先生の処へ行って養生をしていた、女房のお近婆さんが驚き慌てて帰って来たが、大学で解剖後、火葬に附せられた亭主の骨壺を抱いて、涙に暮れるばかりであった。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「なるほど、なかにお諏訪すわさまの灸のあとがあれば、なんとか、いまに見つかるでしょう、あの灸点きゅうてん甲府こうふ近郷きんごうでやっているほか、あまりほかの国にはあんな大きなきゅうは見ないからの」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)