瀝青れきせい)” の例文
しかし天気の不順のために死体がいたむことがあるので、瀝青れきせいを塗った布で死体を注意深く包んで、たびたび手入れをしないでよいようにする。
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
わずか数時間のうちに患者はひからびてしまって、瀝青れきせいのように濃くなった血液のため、けいれんとかすれた悲鳴のうちに、ちっそくしてしまうのである。
そして屋根から下どこもかしこも白い番瀝青れきせいで塗りつぶしたように灰まみれで、高いところにある小窓やそこここの隙間からは、絶えず濃霧のような灰煙があふれ出で
蛮人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
希臘ギリシア商人が自転車で忙がしく商取引所方面に疾走し出すころ、マダム・レムブルグが瀝青れきせいの浮いた黒襦子くろじゅすの着物をつけて朝のミルクのなかで接吻をすると、海峡を船脚はやく航行する汽艇
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
二人はほとんど口をきかなかつた。やがて真夜中が来たとき、彼等は舟を流れの中ほどに出しおたがいの身体をしつかりと結び付けて舟を静かに倒した。ごく低い水音がして瀝青れきせいあくたの波が少し立つた。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
揮發きはつあぶら瀝青れきせいの波は
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
消防隊の人たちは瀝青れきせいのたいまつを持って、最後の客車のそばに並んだ。
鉄道事故 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)