濤声とうせい)” の例文
旧字:濤聲
寄せて来る波はそこから四五間さきで泡を残しては去るが、どうどうと崩れる濤声とうせいは耳を掩い、風が飛沫を吹きつけてよこした。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
半夜、眠れぬままに、遥かの濤声とうせいに耳をすましていると、真蒼な潮流とさわやかな貿易風との間で自分の見て来た様々の人間の姿どもが、次から次へと限無く浮かんで来る。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
海も山も一色ひといろに打ちけぶり、たださえながき日の果てもなきまで永き心地ここちせしが、日暮れ方より大降りになって、風さえ強く吹きいで、戸障子の鳴るおとすさまじく、怒りたける相模灘さがみなだ濤声とうせい
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
海が近いので濤声とうせいが気にかかって、容易に寝つかれない。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)