潸然さめざめ)” の例文
一〇四さりがたき御方に別れ給ふにてやまさん。御心のうち一〇五はかりまゐらせて悲しと潸然さめざめとなく。正太郎いふ。一〇六さる事に侍り。
「何にも喰べられやしませんわ。」とにべの無い返事をして、菊枝は何か思出してまた潸然さめざめとするのである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ……」手を顔におおって潸然さめざめ御仏みほとけのまえに罪を謝したくなる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ故にこそは母のねむりをもおどろかしたてまつれ。只々ゆるし給へと潸然さめざめなき入るを、老母いふ。一一〇牢裏らうりつながるる人は夢にもゆるさるるを見え、かつするものは夢に漿水しやうすゐを飲むといへり。
と肩へむずと手を掛けると、ひれ伏して、雪女は溶けるように潸然さめざめと泣く。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をとこを見て物をもいはで潸然さめざめとなく。