湯婆ゆたんぽ)” の例文
私の寝床には湯婆ゆたんぽが入っていた。そんな心づかいをしてくれた。あくる朝の飯には、ゆうべ焚いた御飯の冷くなったのを食べた。
遁走 (新字新仮名) / 小山清(著)
雑器において信楽の仕事は甚だよく、その他土鍋、植木鉢、湯婆ゆたんぽなど、ここの品には使いたいものが多々あります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「こう始終湯婆ゆたんぽばかり入れていちゃ子供の健康に悪い。出してしまえ。第一いくつ入れるんだ」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
柔らかい毛布にくるまって上には志んの持って来た着物をかけられ、脚部には湯婆ゆたんぽが温かくていい気持になってほとんど何も考えないでウトウトしていたが眠られはしなかった。
病中記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なかがすいたので何かのあつらへもした。お糸さんは湯婆ゆたんぽをこさへて寝巻と一つにもつて来て
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
そうすると床のなかに湯婆ゆたんぽが入れてあった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
湯婆ゆたんぽの一温何にたとふべき
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
あるいは土鍋どなべ行平ゆきひら石皿いしざら湯婆ゆたんぽ、粗末なそれらのものばかりは、醜い時代の力にまだ犯されずにいる。日々忙しく働く身だけは、病いも犯しにくいと見える。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)