温々ぬくぬく)” の例文
「そりゃ勿論、せめてあのおみ足に、もそっと温々ぬくぬくした靴下でもお穿かせ申したらなあ、そうなりゃあ、これほどのお悩みもあるめえにさ」
ああして温々ぬくぬくとした寝床などをしているのに、自分はどうかといえば、これから宿に帰って冷たい夜具の中に入って寂しく寝なければならぬのである。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
肉体もたましいもしっくりと融け合って、細君であると同時に情婦らしい感じのする女、つまり理性と享楽を兼ねていて、沁々しみじみと話がわかって、夜は温々ぬくぬくとしたへや
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
気持はもやもやしていたが、それでいて妙にうれしいような温々ぬくぬくとした気分で、しかもそのいっぽう頭の中では、何やら冷やかな重くるしいきれはしが、こんな理屈をこねていた。——
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
密閉したへやの中に温々ぬくぬくと寝かされて、入る前に母親が接吻をしに来てくれるのを待ちかねていたものだが、時として、あまり咳でもすると、その懐かしい声が隣りのへやから呼びかけた。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)