洛東らくとう)” の例文
洛東らくとうに芭蕉庵を訪ねた時の句である。蕪村は芭蕉を崇拝し、自分の墓地さえも芭蕉の墓と並べさせたほどであった。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
洛東らくとう吉水禅房よしみずぜんぼうでは、期せずして同じ年に、法然上人ほうねんしょうにんが、専修念仏の新教義を唱道となえだしていたのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕪村もと名利をいとい聞達を求めず、しかれども俳人として彼が名誉は次第に四方雅客の間に伝称せらるるに至りたり。天明三年十二月二十四日夜歿し、亡骸なきがら洛東らくとう金福寺に葬る。享年六十八。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
大豆右衛門は洛東らくとう山科やましなの人なり。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
兼好は山の庵へもどりかけたが、思い直したふうでそのまま傘をかかえ、酒つぼを提げ、足駄あしだの音も不器ッちょに、たそがれ近い洛東らくとう粟田口あわたぐちを、まごまごしていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)