法華寺ほっけじ)” の例文
前岸の樹木の間には黒い大きな瓦屋根がかすかに黒く見えていた。それは日蓮宗法国寺ほうこくじに属する法華寺ほっけじの別院であった。他の二人の眼もちらとそれに往った。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
白い橋がかかっている。その橋の向うは、郊外こうがいらしい安料理屋が軒を並べていて、法華寺ほっけじがあると云う事であった。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
法華寺ほっけじ境内けいだい光明皇后施浴こうみょうこうごうせよくの伝説を負うた浴室がある。いわゆるカラ風呂である。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それにもう一つ、貞阿にとって全くの闇中の飛礫ひれきであったのは、去年の夏この土地の法華寺ほっけじに尼公として入られた鶴姫のことが、いたく主人の好奇心をいているらしいことであった。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
有王 姫君さまはこの世をはかなみ奈良の法華寺ほっけじにてあまになって、母上や若君の菩提ぼだいをとむろうていられましたが、去年の秋の暮れふとおゆくえがわからなくなり、手をわけて捜しましたところ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それにもう一つ、貞阿にとつて全くの闇中の飛礫ひれきであつたのは、去年の夏この土地の法華寺ほっけじに尼公として入られた鶴姫のことが、いたく主人の好奇心をいてゐるらしいことであつた。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)