河靄かわもや)” の例文
夕方になって合歓の花がつぼみかかり、船大工のつちの音がいつの間にか消えると、青白い河靄かわもやがうっすり漂う。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
材木町の河岸かしに立った腰を屈めて窺う夜空の下、垂れめた河靄かわもやのなかを対岸北条、秋山、松平の屋敷屋敷の洩灯もれびを受けて、真黒な物が水に押されて行くのが見える。
河靄かわもやが立ち籠めてきた河岸通りの店々が、早く表戸を降している通りへ私は出た。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)