沙丘すなやま)” の例文
漁師は不思議に思って、女の手にかけようとしたおのれの手を引込めた。と、女はそのまま歩きだして、沙丘すなやまにのぼりかけた。
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
微白ほのじろく見える顔も、肩の恰好かっこうも、背たけも、歩き方も、皆懐しい女房であった。漁師は嬉しさがぞくぞくとこみあげて来た。彼は沙丘すなやまを走りおりて近づいた。
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこは陸中りくちゅうある海岸であった。一人のわかい漁師は沙丘すなやまの上に立って、悲しそうな眼をして海のほうを見おろしていた。漁師は同棲したばかりの女房を海嘯のためにさらわれた者であった。
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)