水松いちい)” の例文
そして、本館は水松いちいの刈込垣でめぐらされ、壁廓の四周まわりには、様々の動物の形や頭文字を籬状まがきがたに刈り込んだ、樿つげや糸杉の象徴トピアリー樹が並んでいた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
水松いちい生籬いけがきのあるところ、——そこには苔むした石でたたまれ、両側には紋章のついた柱の立っている正門があった。
教会の周囲には水松いちいの木が茂っているが、その木は教会とおなじくらい年数をへているようだった。
ヘエ・ド・ルウトの墓地の二本の水松いちいは特にウウル県の格別の保護を受けてゐる。一八三二年に、此の二本の水松はその簇葉ぞくようで、墓地全体と会堂の一部を覆つてゐた。
古い壁のそば旋花ひるがおのからんだ一本の大きな水松いちいの下、茅草かやくさこけのはえている中に、一基の石がある。
アメリカの古物好きの眼は隈なく照っている日の光をさえぎって夜のように見える水松いちいの樹の大きな、そして底知れない暗い繁茂や屋根附墓地の荒れた屋根の上にためらっていた。
巡査は右手の棒をあげ、(この国の巡査はけんの代わりに水松いちいの棒を持っているのです。)「おい、君」とその河童へ声をかけました。僕はあるいはその河童は逃げ出しはしないかと思っていました。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ヴォージラールの墓地はものさびた場所で、フランス式の古い庭園のようなふうに木が植わっていた。まっすぐな道、黄楊樹、かしわひいらぎ水松いちいの古木の下の古墳、高い雑草。
主人公は、自分の刈りこんだ水松いちいや、形式ばった高い壇を弁護してくれる議論はなんでも喜んで聞いた。しかし、ときどき現代の自然庭園家に攻撃されることもあるのだった。