毛唐人けとうじん)” の例文
かつては幕府有司のほとんどすべてが英米仏露をひきくるめて一概に毛唐人けとうじんと言っていたような時に立って、百方その間を周旋し
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
東夷とうい南蛮の類であり、毛唐人けとうじんの仲間である。この「ヤヷナ」が「野蛮」に通じまた「野暮やぼな」に通ずるところに妙味がないとは言われない。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もっと毛唐人けとうじんにいわせると——毛唐人といっては穏かでないが、西洋の人ですな、長崎で西洋の山好きに逢いましてな、その男に聞きますとな、感心なもので、あの西洋人の山好きは
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから次には伊井蓉峰いいようほう親父おやじさんのヘヾライさん。まるで毛唐人けとうじんのような名前ですが、それでも江戸ッ子です。何故ヘヾライと名を附けたかというと、これにはなかなか由来があります。
寺内の奇人団 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
毛唐人けとうじんに日本の彫刻が分るものか。気に入らないなら気に入らないでしたらよかろう。こっちで頼んでさせてもらう仕事ではない。向うから頼みに来たのだ。いやならよすまでのことだ。
毛唐人けとうじんは犬やねこのようなまねをしてそれが愛だというんだ、おれはそれが気に食わねえ、日本の写真はそのまねをしてるんだぜ、日本の役者……そうだおれはなにかの雑誌を読んだがね
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ともかくも目立って見える日本固有の詩形の中でも特に俳諧連句はいかいれんくという独自なものの存在する事をこれらの毛唐人けとうじんどもが知っていたかどうか
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
幕府有司のほとんどすべてが英米仏露をひきくるめて一概に毛唐人けとうじんと言っていたような時に立って、百方その間を周旋し
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
紅毛こうもうとも言われ、毛唐人けとうじんとも言われた彼らは、この日本の島国に対してそう無知なものばかりではなかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
当時この国には、紅毛こうもうという言葉があり、毛唐人けとうじんという言葉があった。当時のそれは割合に軽い意味での毛色の変わった異国の人というほどにとどまる。一種のおかし味をまじえた言葉でさえある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)