武庫川むこがわ)” の例文
正成の菊水が後陣へ消え、代って、脇屋義助の軍が、武庫川むこがわのかみから急下してきた朝からの緊迫した鳴動だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんだ、これがあの有名な大井川か。淀川よどがわの半分も無いじゃないか。国元の猪名川いながわよりも武庫川むこがわよりも小さいじゃないか。のう、蛸。これしきの川が渡れぬなんて、式部も耄碌もうろくしたようだ。」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
昆陽こやを出でさせ給ひて、武庫川むこがわ神崎かんざき難波なにはなど過ぎさせ給ふとて、御心のうちにおぼす筋あるべし。広田の宮のあたりにても、御輿おんこしとどめて、拝み奉らせ給ふ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武庫川むこがわの辺まで来ると、春の小糠雨こぬかあめは急に山からと海からとの風に掻きまわされて、痛いような水粒すいりゅうが笠の下へも吹きつけてくる。——師直の馬はしばしば物驚きをしてあと退去ずさった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いえ、武庫川むこがわまで」
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)