楊梅やまもも)” の例文
つい先達て汗だくになつて刈込をした楊梅やまももの枝枝には、茜とも鳶ともつかぬ色のつややかな葉が、可愛らしくもう出揃つてゐる。空には淡い白雲が、動くとも見えない。
おばあさん (旧字旧仮名) / ささきふさ(著)
「おぎんが作った大ももは」と呼び歩く楊梅やまもも売りのことは、前に書いたことがあるから略する。
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
果実にもももなし楊梅やまもも覆盆子いちご等、やわらかくて甘いものがいろいろあるが、なまで食べられる日は幾日いくにちもないから、年中いつでも出るのはほしてたくわえて置かれるものだけであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
毎日、がけを滑り降りて魚釣りに行ったり、山に楊梅やまももを取りに行ったり、朝夕峠を通る坊津郵便局の女事務員と仲良くなったり、よそめにはのんびりと日を過した。電報は少なかった。日に一通か二通。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ゆけば楊梅やまもも袖に散り
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
楊梅やまももも国を離れてからは珍しいものの一つになった。高等学校時代に夏期休暇で帰省する頃にはもういつも盛りを過ぎていた。「二、三日前までは好いのがあったのに」という場合がしばしばあった。
郷土的味覚 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)