梅幸ばいこう)” の例文
その菊五郎が、明治三十六年の早春に倒れ、先代梅幸ばいこうと六代目菊五郎が曽我兄弟の五郎十郎で追善興行を営んだ時は、観客はみんな声を出して泣いた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
羽左衛門うざえもん梅幸ばいこう襲名披露しゅうめいひろうで、こんどの羽左衛門は、前の羽左衛門よりも、もっと男振りがよくって、すっきりして、可愛くって、そうして、声がよくって
フォスフォレッスセンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
その囃し子のまんなかに太鼓を打った花形の子は上方かみがた風の柔和な顔に梅幸ばいこうに似たうけ口をしていた。私はその夜の唄をしるしたたとう紙を忘れずにもって帰った。
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
その春興行には五世菊五郎きくごろうが出勤する筈であったが、病気で急に欠勤することになって、一座は芝翫しかん(後の歌右衛門うたえもん)、梅幸ばいこう八百蔵やおぞう(後の中車ちゅうしゃ)、松助まつすけ家橘かきつ(後の羽左衛門うざえもん
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
羽左衛門うざえもんさんのところと、梅幸ばいこうさんのところと、それから六代目さん。六代目さいわいちょうさんは附属なんですね。そりゃ火鉢だってなんだって、こしらえておあげになるのです。たいした檀那だんなでございますよ」
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
菊五郎の遺子丑之助うしのすけに六代目を相続させて菊五郎に、尾上栄三郎を梅幸ばいこうに、尾上英造を栄三郎に、それぞれ改名を披露させ、歌舞伎座の三月興行において団十郎自身がその口上をのべた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)