松飾まつかざり)” の例文
かくて年は暮れたり。画工は正月の松飾まつかざり整ひたる吉原のくるわ看客かんかくを導き、一夜明くれば初春迎ふる色里のにぎわいを見せて、ここにこの絵本を完了す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東京へ帰ってみると、松飾まつかざりはいつか取り払われていた。町は寒い風の吹くに任せて、どこを見てもこれというほどの正月めいた景気はなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奥深い家の門に松飾まつかざりが立ててある様とも、松飾もまた道路から引込んだあたりに立ててある様とも解せられるが、先ず前の解に従うべきものかと思う。大した句ではないが、松飾の或趣は現れている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)