杢阿弥もくあみ)” の例文
旧字:杢阿彌
いつでも「一合位は」からだんだん枡数ますかずがふえて、半月とたたない中に、いつの間にかまた元の杢阿弥もくあみになってしまう。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
七万両みんなか、元の杢阿弥もくあみかだ。七人のうちには太い奴も居るだろうが、七万両皆んなさらってやろうと、爪を磨いで居るのはこの俺ばかりじゃあるめえ
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
僕なんざ、相も変らぬ元の杢阿弥もくあみだよ。いや、ひょっとすると、かえって悪くなってるかもしれん。
広海屋万代だなぞと、大盤ぶるまいをしおッたな! あれからたったまる一年、へ、へ、へ、もうそなたに子なし、もとの杢阿弥もくあみ——思い知ったか、この長崎屋、仇をうければ
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
すでに平等を嫌ってやむを得ず衣服を骨肉のごとくかようにつけまとう今日において、この本質の一部分たる、これ等を打ちやって、元の杢阿弥もくあみの公平時代に帰るのは狂人の沙汰である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし援助が切れたときは元の杢阿弥もくあみで、そうした例は幾らもある。
菊千代抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もとの杢阿弥もくあみか、とつぶやいて、棄鉢すてばちのように声を立てて笑った。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
『また、元の杢阿弥もくあみで、暫く国でやるんです』
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
お前達はもと杢阿弥もくあみだな。