杖柱つえはしら)” の例文
童貞聖麻利耶様ビルゼンサンタマリヤさま、私が天にも地にも、杖柱つえはしらと頼んで居りますのは、当年八歳の孫の茂作と、ここにつれて参りました姉のお栄ばかりでございます。
黒衣聖母 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
杖柱つえはしらとも頼みたる父上兄上には別れ、あによめは子供を残して実家に帰れるなどの事情によりて、容易に授業を始むべくもあらず、一家再び倒産のあわれを告げければ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「この方は、今の私には杖柱つえはしらのような方です。お前がここに居ることを突止めて下すったのも、嫁のお関が手討になったと見極めて下すったのも、みんなこの平次殿——」
お前一人が杖柱つえはしら……なぞと夢うつつに申しておりますそうで、トント当てになりませぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今のわたしが杖柱つえはしらと取りすがるのは、お前ばかりである。一つには不実な男の顔を見返すためと、二つには廓の苦を逃がれるために、どうぞわたしを請け出してくれと、彼女は繰り返して頼んだ。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)