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朱門
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あかもん
ハッと思ってふり向くとたんに、
丘のいただきにある南面の
朱門が、
魔王の口を開いたように、ギーイと八文字に
押しひらかれた。
ふわりと
鷲を地へ
舞わせて、
南蛮寺の
朱門へおりた
蛾次郎。あッちこッちを見まわしていたが、やがて、
天ヶ
丘の松林を
奥ふかくはいってしまった。
きょうの朝まだきに、
桑名に
在陣する
秀吉のところへ向けて、
和田呂宋兵衛が
護送していこうとする
勝頼の
駕籠は、まだあの
朱門をでて山をくだっていないようだ。