朝臣ちょうしん)” の例文
町を去る三十五里の西高峯は眼の前にあり、しゃくを執る朝臣ちょうしんの如く真黒に頑張って、その周囲にギラギラとした白光は途方もなく拡がっていた。
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
卅年も昔、——天平八年厳命がくだって、何事も命令のはかばかしく行われぬのは、朝臣ちょうしんが先って行わぬからである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
朝臣ちょうしんとなり、転じて自由党に参加して野人やじんとなり、代言人となった彼は、自由民権といい、四民平等ということに、どんなにか血をかしたのであろう。
美代吉に悦ばせる心算つもりゆえおおめかしで、其の頃散髪ざんぎりになりましたのは少なく、明治五年頃から大して散髪ざんぱつが出来ましたが、それでも朝臣ちょうしんした者は早く頭髪あたまを勧められて散髪ざんぎり成立なりたてでございますが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いやいや、たとえ非業に死のうと、俊基が朝臣ちょうしんに生れたことは、いささかの悔いでもない。あす刑場にて首斬られるまでも、一念、鎌倉幕府のほろびを見んと、なおも念じつづけているであろうよ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)