くん)” の例文
晴れた夏には真先にひぐらしの家になったり、雪霽ゆきばれには青空に劃然くっきりそびゆる玉樹の高い梢に百点千点黒いからすをとまらして見たり、秋の入日のそら樺色にくんずる夕は
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一しきり休むとまた馬にまたがり、がむしゃらにけ出す。終日乗り疲れ黄雲こううん落暉らっきくんずるころになってようやく彼は幕営ばくえいに戻る。疲労だけが彼のただ一つの救いなのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
姉妹を乗せた車は先きに、余等三人を乗せた車は之につゞいて、瀬田川せたがわの岸に沿いつゝ平な道を馬場の方へ走る。日は入りかけて、樺色かばいろくんじた雲が一つ湖天にいて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)