暗香あんこう)” の例文
深窓の美姫びき紅閨こうけい艶姐えんそ綾羅錦繍りょうらきんしゅうたもとを揃えて、一種異様の勧工場、六六館の婦人慈善会は冬枯に時ならぬ梅桜桃李ばいおうとうりの花を咲かせて、暗香あんこう堂に馥郁ふくいくたり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一 暗香あんこう
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
時に一縷いちる暗香あんこうありて、垣の内よりれけるにぞ法師は鼻をうごめかして、密にうち差覗さしのぞけば、美人は行水を使いしやらむ、浴衣涼しく引絡ひきまとい、人目のあらぬ処なれば、巻帯姿まきおびすがた繕わで端居はしいしたる
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)