昂騰こうとう)” の例文
この需要が供給に超過しまたは不足することにより昂騰こうとうしまたは下落する価格においての用役の量を、取引証書で表わしていると仮定すればよい。
物価の昂騰こうとうにつれて右翼の非常手段がいつ爆発するか分らぬ恐れがあった。つまり、梶の眼に映った一同の不安は思想と現実とののっぴきならぬ苦悶くもんである。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
非常な物価昂騰こうとうとか、百人に近い家士たちのために、年々更新しなければならぬ武具調度の費用とか、ほとんど不時の出費のたえることはないといってよかった。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「道誉、望みの件は、もう心配すな。あとは、例の楮幣ちょへいの人気を、お辺がどんなふうに昂騰こうとうさせるものやら、それをわしは見ているばかりだ。うまくゆくかな?」
楮幣ちょへいのよびおこした物価の昂騰こうとうもようやくひどいものになってきて、これまでの定賃金では「働き働き、食えなくなる——」という怨嗟えんさが街には充ちているありさまだった。
……幕府では物価の昂騰こうとうを抑えたが、日雇賃ひやといちんを上げることを禁じた。物価はそのままだったが、じっさいになると商人たちは品物を隠して出さない、ぜひ買うには高い代価を払わなければならぬ。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)