サンチ)” の例文
手持筒てもちづつの二サンチほうぐらいな鉄砲の弾丸たまが、ふいに、屋形船やかたのすぐ側へ落ちた。白い飛沫しぶきが、滝のように、ざっと、屋形の中へまでかかった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越中島の砲術調練場でも、パチパチと、豆をるような小銃の間に遠雷のような、八サンチほうの音がしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
サンチ砲や、ストロング砲の巨弾が、地へ無数の穴を掘って、その中に、雨水が血をながしこんでいた。上野は大半以上落ちて、地獄の黄昏たそがれであった。露八は、首のない槍を持って、谷中口やなかぐちへ落ちた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)