放屁ほうひ)” の例文
赤い碁盤縞ごばんじまのフロックを着た先生の末子ばっし愛想あいそに出て来たが、うっかり放屁ほうひしたので、学生がドッと笑い出した。其子が泣き出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
軍人志頤で、陸軍大将を終生の希望とし、乱暴して放屁ほうひするをえらいように思っていたと、二葉亭自身の口から聞いた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
或る日文案を文挟ふばさみに挟んで左大臣の前に捧げて行き、それを時平に渡そうとするはずみにわざと音高く放屁ほうひをした。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
例えば今私がここへ立ってむずかしい顔をして諸君を眼下に見て何か話をしている最中に何かの拍子ひょうしで、卑陋ひろうな御話ではあるが、大きな放屁ほうひをするとする。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その着物に、家の中のあの貧乏びんぼうのにおいや、ポンツクのなまぐさいにおいをつけて、学校へやってくる。そのうえ、注文されなくてもかれは、ときおり放屁ほうひする。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
砥粉をくらえば止めようと欲してもおのずと放屁ほうひして止める術がないという俗説があるのだそうな。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そう云えば一度庄造が布団の中で放屁ほうひを鳴らすと、その布団の上のすその方に寝ていたリリーが、びっくりして眼を覚まして、何か奇態な啼き声を出す怪しいやつが隠れているとでも思ったのであろう
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)