掛布団かけぶとん)” の例文
旧字:掛布團
眠る前に、彼は掛布団かけぶとんをかぶって、こんこんせきをする。のどを掃除するためである。しかし、鼾をかくのは、ことによると、鼻かもしれない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
掛布団かけぶとんはしねられた寝床ねどこ人形がゆかに落ちて俯向うつむきになっていた。鼻を床につけて正直にうつ向きになっていた。ただそれだけが彼女を一時間も悲しく泣かした。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
掛布団かけぶとんの間へ入れて寝かしてやる、無精によくねる、いくら寝ても飽きたと云う事を云わない、夜昼寝つづけに寝る、たたき起してほうり出すといやな顔もせず飛びまわったりじゃれついたりする。
あんなことはちっとも厭らしいことではない、だから、苦にするには及ばないと彼は思った。それにしても、掛布団かけぶとんの下の暗闇の中に、ヴィオロオヌの面影おもかげがちらちらと浮かびあがる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
彼女は、掛布団かけぶとんふちをぎゅっとひと息に押し込んでくれる。それから蝋燭の火を消す。その蝋燭は置いて行くが、マッチなるものは残して行かない。戸を閉めて鍵をかける。彼が臆病だからである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)