据物斬すえものぎ)” の例文
かれはただ、この凄腕すごうでのある孫兵衛——丹石流の据物斬すえものぎりに、妖妙ようみょうわざをもつお十夜を、うまく利用しようというつもりなのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相手がやくざ者なら背中の方がもっとけているはずだ、——ところが、権次は背後から斬られているくせに、切先が胸の方へ下がっている、これは据物斬すえものぎりの名人の腕前だ。
『平四郎。聞けばおぬしは、萩井家の道場でも、据物斬すえものぎりでは、第一の腕だそうだな。……嫌な役目だがひとつ引受けてくれんか』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——思うといつの間にか、万吉の後ろへ、ぬウと立ったお十夜が、そぼろ助広に手をかけて、据物斬すえものぎり! 息を計っていたのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上へ刀を振りかぶれる空間があれば、据物斬すえものぎり、ただ一ふりに割りつけること、孫兵衛の手になんの苦もないことだろうが、見当のつかない暗闇。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今し方もここへ見えた、見廻り役人の話では、刀試しじゃない物盗ものとりのさむらいで、しかも、毎晩られる手口を見ると、据物斬すえものぎりの達者らしいというこった」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うん、それじゃ一つ庭先で、丹石流たんせきりゅう据物斬すえものぎりを見せてやろうか。おい、手を貸せ!」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム!」と据物斬すえものぎりの腰、息を含んで、右手は固く、刀の柄糸つかいとへ食い込んだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一、平生殺傷沙汰さっしょうざた多く、辻斬つじぎ据物斬すえものぎりなど好む事
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)