拳下こぶしさが)” の例文
振袖源太は、赤地總模樣の大振袖の腕をまくり上げて、拳下こぶしさがりに一刀を構へたまゝ。三丈餘りの高梁たかはりの上から、土間の平次を見下ろしました。
光秀が之を取れば、随時に秀吉の左翼から、拳下こぶしさがりに弓鉄砲を打ち放して切ってかかることが出来るし、秀吉が之を取れば逆に光秀軍の右翼を脅威することが出来るのである。所謂いわゆる兵家の争地である。
山崎合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
主人の床はお島が敷くから、佛樣の膝から拳下こぶしさがりに鐵砲の筒口を向けると、唐紙越しに半兵衞の胸を撃つことは、ちやんと前から見當をつけて置いたんだらう
穴のふちが少しげてゐるところを見ると、此の位置から拳下こぶしさがりに撃つたもので、その工合は臺の上に結跏趺坐けつかふざした佛像が、膝だめに打つ放したものとしか思はれません。
「いや、お隣りの羽目まで、庭の一番深いところで五間そこ/\。羽目には手掛りも足掛りもないし、屋根の上から弓を射たのでは拳下こぶしさがりに狙つても、茶の間の奧の唐紙へは來ませんよ」