拠処よんどころ)” の例文
旧字:據處
この夏、拠処よんどころない事情があって、箱根蘆ノ湖畔三ツ石の別荘で貴様の母を手にかけ、即日、東京検事局に自訴して出た。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
派出婦をしていたころ男に押えつけられれば拠処よんどころなくその意に従った。真面目まじめな人から説き勧められれば嫁にも行った。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何となくきまりわるそうに、まぶしい様な風で急いで通り過ぎて終う。拠処よんどころなく物を云うにも、今までの無遠慮に隔てのない風はなく、いやに丁寧に改まって口をきくのである。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
拠処よんどころなく苦笑しながら、下女を呼んで
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)