手廻てまわり)” の例文
そこでそのお家へ、大切な品はよくくくって幾つか預け、手廻てまわりの品だけ持って引移りましたが、どんな些細ささいな物にも名残が惜しまれるのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
貞固の養子房之助はこの年に手廻てまわりを命ぜられたが、藩制が改まったので、久しくこの職におることが出来なかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
坂崎五左衛門、速水勝左衛門、八番には手廻てまわり小姓与こしょうぐみ、九番には馬廻、十番には後備あとそなえ関勝蔵、都合其勢六千余騎、人数多しというのでは無いが、本国江州以来、伊勢松坂以来の一族縁類
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浅草へ行って蔵前辺に屋台店でも出してみよう、煮込おでんのつゆを吸っても、かつえて死ぬにはましだという、祖父の繰廻しで、わずか残った手廻てまわりの道具を売ってうごきをつけて、その俵町の裏長屋へ越して
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手廻てまわりにあるに、なんの威力が方々に仇をしましょう。