戦慄おのの)” の例文
旧字:戰慄
そして一足でも歩もうとすればこれらの打壊された宝玉の破片は身も戦慄おののかるるばかり悲惨なひびきを発し更に無数の破片となって飛散る。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ただ僧徒らに何らの抗意なく、いたずらに戦慄おののけるのみなると、さきには陰地かげじに立てりし妙念の、今ところを異にして月色の中に輝けると異る。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
「はああそれでは浪士どもが、集会の用に立てようため、そんな気味の悪い噂を立て、人を付近に近寄せないのだな」こう考えて来ていよいよ義哉は身の危険に戦慄おののいた。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
眼をみはると、白紫陽花しろあじさい戦慄おののくような女の姿が、ちらと、そこの蔭に見えた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とどめた杖が震え、その杖によって支えられた足が戦慄おののいているらしい。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼のそそけたびんの毛は師走の寒い風にさびしく戦慄おののいていた。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
われ戦慄おののきて薪を投ぐる響をきけば